東海大学医学部付属八王子病院外科  潜在性腫瘍細胞(ONCs)研究会編集

         





大腸がん・胃がん検診のすすめ
 

40才を過ぎたら大腸がん・胃がん検診をお勧めします。
便潜血検査やバリウム造影検査など種々の検査方法がありますが、この中でも肛門から盲腸まですべてを内視鏡で観察する全大腸内視鏡検査(TCS)と胃内視鏡検査をお勧めします。数ミリのポリ−プを容易に発見することができ、小さいポリ−プであれば、その場で同時に切除することも可能です。TCSは外来検査として10〜15分で施行可能ですが、検査前日に若干の食事制限と下剤(腸管洗浄剤)の服用が必要です。症状が出ていなくても全大腸内視鏡検査・胃内視鏡検査をご希望される方は是非一度ご相談ください
 
 
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その他の検査 


 
超音波検査:
エコーとも呼ばれ、人間には聞き取れない高い周波数の音を体内にあて、その反射を画像化して臓器の状態を調べる検査です。人体には全く無害で痛みもありません。がん検診においては、甲状腺・腹部・骨盤部を中心に検査し、脳検診においては、頚動脈の狭窄、動脈硬化などを精査します。
 
CT(シーティー)検査:
コンピュータ断層撮影で、X線を使用して臓器の形態的な異常を見つける検査です。X線で360度・全方向から検査する事で、人体をちょうど輪切りにした様な断層画像を撮影でき、大きく広がっているタイプの癌や、悪性度の低い高分化がんの発見にも優れています。頭部、頚部から、食道・気管支・肺などの胸部、肝臓・腎臓などがある上腹部から骨盤腔等の診断を行います。
 
MRI(エムアールアイ)検査:
磁気共鳴断層撮影で、強力な磁場と電波を利用して体内の状態を撮影する検査です。姿勢を変えることなく、あらゆる角度の断面像を得ることができます。頭部や骨盤部を得意とし、脳の診断や前立腺がん、女性特有の疾患の検出に優れています。
 
PET(ペット)検査:
陽電子放射断層撮影で、がん細胞の性質を利用した生理機能診断です。体内にぶどう糖に良く似た構造を持つFDG(フルオロデオキシグルコース)という薬剤を静脈注射より体内に投与することにより、FDGの集積状況を診て診断します。一度に全身(頭部〜下肢までの全範囲)の検査ができ、痛みや不快感も少なく、がんの有無や位置、進行具合を調べる検査です。
 
 

 
死亡原因
 
我が国の主要傷病の死亡原因 第1位は悪性新生物で、第2位が心疾患、第3位が脳血管疾患となっています。悪性新生物では、男性の第1位が肺がんで、大腸がん、胃がん、膵臓がんと続き、女性の第1位は乳がんで、以降大腸がん、肺がん、膵臓がんと続きます。男性では肺がん、大腸がん、膵臓がんが増加傾向、女性では乳がん、膵臓がんが増加傾向にあります。悪性新生物による死亡原因の分布全体が欧米化し始めているといえます。
 
 

 

 


消化管に生じるがんでは、2000年頃まで男女とも、胃がんが圧倒的に死亡原因の1位でしたが、近年胃がんの早期診断と早期治療による全成績の大きな改善結果から、死亡率は減少傾向となりました。現在では、食物やライフスタイルの欧米化などから、大腸がんが著しく増加しています。



 
大腸がん部位別分布率

  〜1999年 2000年以降
直腸 約50%(男性) 約30%↓
S状結腸 約20% 約30%↑(女性)
その他 約30% 約40%

 
 



 
大腸ポリープと大腸がん
 
●大腸ポリープとは
大腸ポリープは、大腸の粘膜面にできる小さい隆起性病変の総称です。このうち約80%を占め、大腸癌と密接に関連するのが“腺種”といわれる良性の腫瘍です。50才以上の人の大腸内視鏡検査受診者の約30%以上に認められ、大腸のどの部位にも広く発生します。一般的に数ミリ大のものがほとんどで、10mm以上の大きさになると約20%、20mm以上になると約50%の頻度でポリープ内の一部にがん細胞が混入するといわれています。
 
●大腸ポリープ(腺腫)−がん連鎖とは
大腸がんの発生は、正常粘膜から隆起したポリープ(腺腫)が、次第に大きくなりがん細胞を混じ、進行したがんに連続して変化するという説です。この説には大腸全域に生じるポリープと大腸がんの部位別分布差や、性、年齢差、肉眼的・組織学的形態など矛盾点も多く認められます。このため最近では、大腸粘膜がポリープのように隆起形態をとらず、突然陥没して潰瘍を形成するのではないかという説の方が有力です。しかし、腺腫−がん連鎖は非常に理解しやすく、大腸ポリープが大きくなるとがん細胞が混入しやすくなるということを覚えておきましょう。
 
   
 
 
 
 
大腸がん Q&A
 
 

Q:なぜ、がんはできるのですか?
A:発がん物質・遺伝子異常など様々な原因が関与すると云われておりますが、その詳細はよくわかっていません。

Q:大腸がんの治療にはどのようなものがありますか?
A:内視鏡的切除術、手術的摘出(腹腔鏡補助下・用手腹腔鏡下・定型的開腹)、抗がん剤や放射線照射などの補助療法があります。

Q:なぜ、一般的に切除(手術)が必要なのですか?
A:切除しないと、がんが大きくなり大腸の内腔をふさぎ、腸閉塞になってしまうからです。

Q:なぜ、がんは怖いのですか?
A:手術(根治治癒切除術)をしても再発して生命を脅かすことがあるからです。

Q:なぜ、がんは再発するのですか?
A:極微量のがん細胞が体内で生き続けるからであると考えられています。

Q:なぜ、がん細胞が体内で生き続けるのですか?
A:生体防御の免疫反応等から回避し打ち勝ち、ある臓器に生着するからであると考えられています。

 

 
 
 
参考文献
 
<大腸がん・胃がん一般>

 

大腸癌取り扱い規約, 7, 大腸癌研究会/, 金原出版株式会社, 2006.

大腸癌治療ガイドライン−医師用, 2009年版, 大腸癌研究会/, 金原出版株式会社, 2009.

大腸癌治療ガイドラインの解説−2006年版, 大腸癌研究会/, 金原出版株式会社, 2006.

Knack & Pit falls: 大腸・肛門外科の要点と盲点, 2, 文光堂, 2004.

胃癌取り扱い規約, 13, 日本胃癌学会/, 金原出版株式会社, 1999.

胃癌治療ガイドライン−医師用, 2, 日本胃癌学会/, 金原出版株式会社, 2004.

Knack & Pit falls: 胃外科の要点と盲点, 1, 文光堂, 2003.

国民衛生の動向, 2009年版, 厚生統計協会 53: 44-47, 2009.

 

 
<内視鏡>
 

Masaya Mukai, et al. Endoscopic hook knife cutting of a severe anastomotic stricture after rectal cancer resection. Endoscopy. 2009; 41: E193-E194.

Masaya Mukai, et al. The experimental model of two-colonoscope surgery for superficially spreading colonic tumors larger than 3cm in the right colon. Oncol Rep. 2007; 18: 629-632.

Masaya Mukai, et al. Endoscopic mucosal resection for superficially spreading colonic neoplasms larger than 5 cm in the right colon after dilute sodium hyaluronate injection: report of two cases. Endoscopy. 2003; 35: 973-975.

Masaya Mukai, et al. Novel three-channel and three-slit stiffening tube for total colonoscopy. Endoscopy. 2002; 34: 382-384.

Masaya Mukai, et al. Novel approach to colorectal endoscopic mucosal resection using a three channel outer tube and multiple forceps: an experimental assessment. Endoscopy. 2001; 33: 253-256.

Masaya Mukai, et al. Decreasing the volume of polyethy- lene glycol electrolyte lavage solution to less than 2 liters in patients undergoing bowel preparation. Tokai J Exp Clin Med. 2000: 25; 27-32.

他多数論文より

 
 
 
 
 
 
 




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